大学生のためのBDRサマースクール

 期間中のレポート

2019年より「大学生のためのBDRサマースクール」に改称した本イベントですが、COVID-19の影響による開催中止を受けて3年ぶりに、BDR神戸と大阪キャンパスにて2022年8月22日(月)から26日(金)までの5日間にわたり実施しました。今回は108名の応募があり、選考の結果、11の研究室に合計26名の学生を受け入れました。

8月22日(月)初日

前身の「大学生のための生命科学研究インターンシップ」から数えて今年で9回目となる「大学生のためのBDRサマースクール」研究に没頭する暑くて熱い5日間が3年ぶりに始まりました!
初日はオリエンテーションから始まり、その後、ラボでの実験を早速開始します。 大阪キャンパスから6名、神戸キャンパスから20名の参加者がそれぞれの会場に集まり、両会場をオンラインで繋ぎオリエンテーションを開始しました。最初は、緊張気味に集まった参加者の皆さんも、自己紹介とラボ紹介が終わるころにはいくらか和み、大いなる期待と少しの不安を抱えつつ、それぞれの配属ラボに向かいます。例年であれば、夕方に再び参集し、「恒例」のカレーを食べながら交流会を実施するのですが、今年度はコロナ感染防止対策の観点から、大変残念ですが、実施を見合わせました。

2日の様子1 2日の様子2
 
8月23日(火)~25日(木)

2日目は城口克之チームリーダーの講義からスタートしました。講義の中で出た「死とは何か」という哲学的な質問に対して、講義終了後も講師への参加者の質問が続き、皆さんで議論されていました。講義終了後、他のラボを見学するツアーが行われました。ここでもPIと生き生きと交流する参加者の姿が印象的でした。その後は再びラボに戻って実験の続きです。

3日の様子1 3日の様子2
3日の様子3 3日の様子4
3日の様子5 3日の様子6

8月24日(水)は引き続きラボでの実験と神戸ではラボの見学ツアーとフリーディスカッションが行われました。5日間という短い期間で参加者の皆さんが最高の体験をできるように、各ラボはこのプログラムのために早くから周到な準備を進めてきました。

4日の様子1 4日の様子2
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8月25日(木)、早くも後半に突入です。午前中には濱田博司チームリーダーによる講義がありました。研究者として歩んできた道を振り返る講義内容で、その中で研究の醍醐味についても触れられ、心を揺さぶれた参加者も多かったのではないでしょうか。その後、またラボへ。最終日の研究発表に向けていよいよラストスパートです。

5日の様子1 5日の様子2
8月26日(金)最終日

 ついに最終日の研究発表会、大阪キャンパス配属の皆さんも神戸キャンパスに来られ、これで全参加者が一つの会場に集まりました。西田栄介センター長による激励の後、参加者が5日間の集大成となる研究発表に臨みました。司会やタイムキーパーなどの進行も参加者が担当し、自分たちの研究発表会を作り上げていきました。質疑応答も活発に行われました。 すべての発表が終わった後、厳正なる審査の結果、「PI選考賞」が染色体分配研究チーム、比較コネクトミクス研究チーム、多階層生命動態研究チームへ、参加者が選んだ「学生投票賞」がバイオコンピューティング研究チームへ贈られました。

6日の様子1 6日の様子2
6日の様子3 6日の様子4
6日の様子5
 

最後にみんなで記念撮影! 参加いただいた皆さん、本当におつかれさまでした。

全体写真

 5日間のサマースクールを終えて

 
奈良女子大学理学部化学生物環境学科生物科学コース 4年 太田光咲
『とりあえず応募しちゃいなよ』

 学内に住む小鹿を愛でていたある日、大学の掲示板に貼られていた本企画のポスターを目にしました。その時は「ふーん、こんなんあるんや」くらいの印象でしたが、ウェブサイトで参加ラボ一覧を見て、以前から知っていた岡田先生のラボが参加されているとのことで、一気に興味がわきました。
高校生のころからミオシンが可愛くて、「推し」ていた私。しかしまだ大学では研究室未配属で本格的な研究は始まっていなくて、この年の夏休みは暇になりそうな予感がしていました。それなら行くしかないか、と決心。ついでに神戸にも行ってみたかったのです。
募集要項を見てニンマリしました。求められていたのは専門的な知識や技術・経験ではなくて、大学生の熱意でした。勢いで岡田先生宛にミオシンのラブレターを書いて送信しました。
結果採用され、細胞小器官の観察や、モータータンパクの一分子計測をさせていただきました。3分クッキング方式で「出来上がったものがこちらになります」と用意していただいたものを、光学かつ高額な顕微鏡で見てみたり、まだどんな結果が出るかわからない研究に携わらせていただいたりしました。おいしい成功例を見るところから、いいサンプルが見つからなくて苦労の末の喜びを味わうところまで、研究者らしい体験をもりもりでいただきました。
全国から集まった学生さんとのお話もすごく楽しかったです。彼らには私と同じくらい、それ以上の情熱があって、新しい知識や経験に貪欲で、積極的で、1を話したら100返してくるような人たちです。同じ研究チームに配属されたメンバーには、短い間でしたが苦楽を共に乗り越えたこともあり、戦友のような信頼があります。
応募するか迷ってるのでしたら、とりあえず応募してほしいです。これを見ている皆さんは社会的に見たらきっとまだまだ若いし、「自分は大学の成績もよくないし…」「論文とか全然読めてないし…」とか過剰に気にすることはありません。 この企画では熱意が求められていますので、正直に、今浮かんだ気持ちを言葉にして送ってみてください。

 
東京女子医科大学医学部医学科 3年 佐藤菜緒子
『原点』

 私には、将来、医師のバックグラウンドを持ちながら、再生医療に携わりたいという夢があります。この夏、日本最高峰の理化学研究所で過ごす経験は、自分が目標とする姿を肌で感じる絶好の機会になると思い参加を志しました。
私は、呼吸器形成研究チームに所属し、「老化と肺胞幹細胞ニッチ」をテーマに、オルガノイド作製に用いる線維芽細胞の老化が、肺胞幹細胞に与える影響について研究しました。実際に、オルガノイド作製、共焦点顕微鏡での撮影、統計ソフトRを用いたデータ解析など本格的な研究手法に触れることが出来ました。加えて、実験計画、スライド作製、発表なども行い、研究活動の一連の流れを経験し、充実した日々を送りました。私たち学生は、研究経験がほとんどありませんでしたが、PI(Principal investigator)の先生や研究員の方が、一から丁寧に教えて下さりました。また、今後の進路や研究者としての歩み方など学生が持っている悩みについても一緒に考え、私たちに正面から真摯に向き合って下さったことは、とても嬉しかったです。最終日前日、チーム一致団結し発表資料を作製したことは、忘れられない思い出のひとつになりました。研究員の方の発表に対する熱意から、研究成果を伝えることの重要性を感じ、分かりやすいプレゼンには、データの見せ方等に細かい工夫がたくさん凝らされていることを学びました。この学びを将来の発表に活かしていきたいと考えています。
サマースクールでは、他のラボを訪問し、研究内容の話しを聞くオープンラボや著名な先生による講義などもあります。様々な分野の世界第一線で活躍される研究者の方々と直接お話しできる経験は、唯一無二と言っても過言ではないチャンスです。先生方がイキイキと楽しそうに研究されており、とても輝いて見えたことが印象的でした。同時に、私もこのような研究者になりたいと強く思うようになりました。自分の理想像に出会えたことは、大変幸せなことだと思います。
理化学研究所は、「もっと勉強したい」と自然に思ってしまう刺激的な環境です。過去のサマースクール参加者の感想文の中で、「人生が変わるきっかけ」になったという言葉を目にし、半信半疑で参加しましたが、今は違います。このサマースクールは、研究を志す学生に、衝撃的な経験を与えてくれるに違いありません。私にとっては、これから研究を進めていく上での原点になりました。
このような貴重な充実した経験を得られたのは、森本先生、桂さん、山岡さんを始めとする呼吸器形成研究チームの皆さん、サマースクールを開催して下さったBDRの方々、そして、一緒に学び合い、高め合った仲間のお陰です。この場を借りて厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 
北海道大学理学部生物科学科高分子機能学 長嶋咲未
『人生の分岐点』

 このサマースクールは、私にとって間違いなく、人生を変えるような5日間でした。
私の所属した比較コネクトミクス研究チームでは、内視顕微鏡を用いて養育行動中のマウス大脳皮質の神経活動を記録し、取得したデータを解析してその関係を調べるという研究を行いました。
以前から興味のあったニューロサイエンスという分野に初めて実際に触れることが叶い、その面白さに瞬く間に心を奪われました。未だ解明されていない脳領域や神経回路にはロマンを感じますし、蛍光染色した脳切片のイメージングは非常に美しくて最高で、私はこれから、この分野にもっと深入りしていきたいと思いました。
サマースクールに参加する前、私の中には研究をすることや研究の道に進むことに対して漠然とした自信の無さと不安がありました。それでも自分の知りたいことを突き詰めていくということに憧れがあり今回のインターンに飛び込んでみた結果、研究活動そのものの面白さだけでなく、どのような心構えでやっていけば良いか、実際に第一線で活躍している研究者がどのような考えを持っているかなども学ぶことができました。勉強になることばかりで、今では自分のやってみたいと思うことを頑張りたい、挑戦してみようという気持ちが以前とは比べ物にならないほど大きくなりました。紛れもなく、自分の世界が広がった感覚があります。
研究活動そのものはもちろん、プレゼン準備や他の研修生との交流、理研にいた時間の全てが刺激的で本当に楽しかったです。自分のこれからについて深く考えるきっかけになりましたし、一流の研究者の元で学ばせていただいた経験と、同じ道を志す仲間との出会いはきっと一生の財産です。
沢山の厚いご指導をしてくださった宮道先生を始め比較コネクトミクス研究チームの皆様と、今回のインターンシップの企画をしてくださった理研BDRの皆様には、感謝してもしきれません。
ありがとうございました。

 
日本大学生物資源科学部海洋生物資源科学科 3年 渡部芳春
『新しい扉』

今回のサマースクールでの体験は、自分の知らない世界に飛び込み、知的好奇心を満たしていきたいと思えるようなきっかけを作る、とてもいい機会になりました。
私は大学三年生という立場にあり、これからどのような研究や進路を選択していくかを悩んでいました。そんな中で、このBDRサマースクールのプログラムを友人から聞き、「知らない世界に飛び込み、人との交流や体験を通して自分にないものを得て、成長できるきっかけになるかもしれない」という思いのもと、一つのチャレンジのつもりで応募させていただきました。
所属させていただきました、多階層生命動態研究チームでは全国各地の生き物や環境水由来のサンプルから単離した細菌の全ゲノムを読んで種を同定し、配列をデータベース上にあるものと比較しながら考察していくということを体験しました。この体験の中で、自分が知らない細菌に関する知識はもちろん、出てきたデータをどのように解釈するかや、どのように今後の研究につなげていくかを考えるためのヒント、発表スライド・資料のまとめ方などをチームリーダの古澤先生をはじめ、研究員の方々に教えていただきました。
また、今回のサマースクールを通して他大学の異なる分野を勉強している学生との交流の中で、自分にはない視点や考え方、探求心を学ぶことができ、自分の研究や学問に対するモチベーション向上にもつながるいい刺激になりました。こうした機会は自分の人生の中でもそうそうないと思います。今回の経験を自分の中でより良いものにするため、経験を経験だけで終わらせずに、自分の知らない世界を見たいという思いを大事にしながら、その世界につながる扉を臆せずにどんどん叩いていこうと思います。
最後に、お世話になった多階層生命動態研究チームの皆さん、サマースクール関係者の方々、本当にありがとうございました。

 
感想文をご提供くださった皆様、ありがとうございました。