大学生のための生命科学研究インターンシップ

期間中のレポート

2018年8月20日(月)から24日(金)までの5日間にわたり、「大学生のための生命科学研究インターンシップ」を実施しました。今回は80名の応募があり、選考の結果、9つの研究室に合計26名の大学生の受け入れを行いました。

8月20日(月)初日

今年で7回目を迎える理研BDRの「大学生のための生命科学研究インターンシップ」が始まりました! 暑くて熱い、研究に没頭する5日間。初日からオリエンテーション、ラボでの実験に交流会と盛りだくさんです。夕方の交流会では明日からの研究活動に備えてカレーでエネルギーチャージしました。

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8月21日(火)~23日(木)

2日目はSa Kan Yoo TLの講義からスタートしました。自身の経歴から研究の紹介まで、幅広い内容に皆さん真剣な眼差しで聞き入っていました。講義の後は再びラボに戻って実験の続きです。実験にも少し慣れてきたでしょうか? 夜には他のラボを見学するツアーが行われました。

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8月22日(水)、早くも折り返しの3日目を迎えました。ラボのPIやスタッフに教わりながら、一生懸命実験やデータ整理を進めています。最終日の研究発表会に向けてますます熱が入っている様子です。夜には21日に続いて、ラボ見学ツアーの第二弾が行われました。

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8月23日(木)、後半戦の4日目となりました。午前中にはYu-Chiun Wang TLによる英語での講義があり、質疑応答もしっかりと行う姿が印象的でした。翌日の研究発表会に向けて、実験や発表準備にもますます熱が入ります。

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8月24日(金)最終日

ついに最終日を迎え、5日間、必死に進めてきた研究の成果を報告する研究発表会が行われました。発表のみならず、司会やタイムキーパーなどの進行も担当することで、自分たちの研究発表会を作り上げていきます。皆さん緊張しつつも集中して、考え抜いたプレゼンテーションを披露しました。 厳正なる審査の結果、「PI選考賞」は染色体分配研究チーム、発生エピジェネティクス研究チーム、血管形成研究チームへ、参加者が選んだ「学生投票賞」は血管形成研究チームへ贈られました。なんと血管形成研究チームはダブルでの受賞です。

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最後にみんなで記念撮影! 参加いただいた皆さん、本当におつかれさまでした。

全体写真

5日間のインターンシップを終えて

 
慶應義塾大学環境情報学部環境情報学科 2年 石井愛海
『充実した5日間』

本インターンシップを通して、自分の今後やるべきことや進路先を明確にする良いきっかけとなりました。私は今回、進路先を研究者にするか企業に就職するかそれに伴う院進について考えるために参加しました。また、高校からやってきた研究技術がどこまで通用するかを知るために参加しました。
私が配属された北島先生の染色体分配研究チームではマウスの卵母細胞を使用し、紡錘体形成因子HURPの局在についてインジェクションやライブイメージングを用いて研究しました。初日に昨年の発表スライドを見させていただき、圧倒的な解析数と考察数で4日後までにここまでの完成度に仕上げることができるか不安でした。しかし、北島先生を初めとして研究員さんたちが総出で一から丁寧に教えてくださり昨年の研究成果に引け目を取らない成果を上げることができました。
5日間を通して高校で培った技術は氷山の一角であり今のままでは太刀打ちできない事を悟りましたが、これから現在の所属研究室についていければ研究者に近づけると確信しました。自分の研究分野だけの知識以外も勉強するのはもちろんのこと、研究者たるもの使用する機械の仕組みを熟知するために数理や物理、プログラミングも必須能力であることを痛感しました。また、実験の合間の休み時間や交流会で研究者の皆様の生い立ちを聞くことにより自分が進むべき道が明らかになりました。
インターン初日を迎えるまで私は医学部や理学部などでないため、足手まといにならないかとても不安でした。しかし、それはインターン生全員が同じ気持ちであり実際生物系の学部に所属していない人たちもいました。自分の力試しのためにも臆せず参加することで思いがけない多くの事を学べると知りました。悩む暇があれば挑戦し勉強も怠らず日々成長し続ける精神が大事であると理研の皆様から学びました。
研究の楽しさを教えてくださった北島研究室の皆様並び、このような機会を与えてくださり貴重なお話を聞かせてくださいました理研の関係者皆様に心より感謝申し上げます。

 
慶應義塾大学医学部 4年 鈴木亮介
『サイエンスの面白さを再発見!』

国内最高峰の研究機関でかつInternationalなラボで研究をしてみたいという思いから、このインターンシップに応募しました。私は血管形成研究チームのLi-Kun研に配属され、「ゼブラフィッシュの初期胚において血流が血管発生に与える影響」を調べました。この5日間のプログラムには血管発生の基礎知識・実験手技の習得、共焦点顕微鏡の操作、画像データの解析、英語での成果発表という一連の研究プロセスが濃密に組み込まれていたので、短い期間ながらも充実した研究体験をすることができました。
予想通り、英語でのコミュニケーションにはかなり苦労しました。1日目はLi-Kun先生の説明があまり聞き取れず、他のメンバーの助けを借りて何とか理解していました。3日目にもなれば徐々に慣れてきて、実験で生じた疑問を訊く程度のことはできるようになりました。日本にいながら外国人の多いラボに身を置けたのは、留学さながらの非常に貴重な体験だったと思います。
また普段は使わないゼブラフィッシュを用いたIn Vivoの実験を経験できたのも今回の収穫の1つです。実験系が違うとそれに合わせて思考法も変わるようで、大学での培養細胞を用いたIn Vitroの実験の際には細胞内でのタンパクのふるまいを考えていたのですが、今回の実験系では心臓・血管といった臓器や組織レベルの思考ができていたと思います。研究における思考の幅を広げる良い機会になりました。
さらに新たな発見をする純粋な喜びを味わえました。1日がかりの画像解析の末、ようやく仮説をサポートできる結果が出たときは気持ちが昂りました。加えて、使えないと思っていたデータも、もう1度考え直してみると仮説とは異なるストーリーも考えられることに気づき、我々が想定していたモデルに新たな可能性を書き足すことができました。
医学部での授業は基礎医学を終えて臨床医学に入り、私も同期も臨床志向になっていた頃でしたが、このプログラムを通してBasic Science、特に発生生物学特有のダイナミックな生命現象の面白さを再発見することができました。このインターンシップは純粋学問としての生物学の魅力を再認識し、進路を考え直す良いきっかけになりました。
Li-Kun先生は5日間つきっきりで実験を見ていただいて、実験操作・解析・発表の仕方などあらゆる面でつぶさにアドバイスしてくださりました。本当に感謝しております。またこのインターンシップの運営に携わった研究員、職員の皆様にこの場を借りて感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました。

 
信州大学医学部医学科 6年 矢賀勇志
『生命科学研究と医学研究の狭間で』

今回私が本インターンシップを志願した理由は、一つは私が現在所属する医学部内では行われていない最先端の生命科学研究の実際に触れて見たいと考えた為であり、もう一つは医学部以外の様々な専門分野を背景に持つ方々と幅広い交流を持ちたいと考えた為です。
前者の理由に関して、理化学研究所内では、例えば、新規の蛍光色素、遺伝子改変技術、エピジェネティクス研究等と言った最先端の生命科学研究や先端技術の開発が盛んに行われており、時に自分の理解の域を超えることもありましたが大変刺激的でした。また、この様な最先端の生命科学研究の実際を知った上で、私は今現在の生命科学研究の進捗に対して医学研究が追いついていないと感じました。更に、今後増々研究が高度化を遂げて行く中で、この様な乖離は更に広がるものと思われました。今後、この様な乖離を埋めて医学が生命科学の更なる発展の恩恵を受け続けるためには、生命科学研究と医学研究の架け橋と成る新たな人材の育成も必要であると考えられます。そのため、私は本インターンシップを通じて最先端の生命科学研究に触れた経験を糧に、医学の範疇に留まらず生命科学研究と医学研究をつなぐ架け橋と成ることを目指したく思います。
後者の理由に関して、私が所属する医学部や病院は医療従事者しか存在しない閉ざされた世界でありますが、理化学研究所に勤められている先生方や本インターンシップで全国から集った仲間達は、様々な専門性を有する方々であり、その様な方々に5日間囲まれて共に実験をし議論をしたことで、自分の視野や見識が格段に拡がりました。例えば、一つの実験結果を考察するにしても、各自の専門性に裏打ちされた活発な議論が為されましたが、この様にして、それぞれの専門性を出し合って多様な視点から研究を進めていくことの素晴らしさを痛感したと共に、様々な専門性の人材を集めることも良い研究を行って行く上で肝要であると思われました。本インターンシップでの経験を糧に、今後医学研究に携わっていく上で、積極的に他分野の専門家達と人脈や交流を築いていきたく思います。
末筆になりますが、5日間のインターンシップ期間中懇切丁寧にご指導くださった松崎文雄先生を初め非対称細胞分裂研究チームの皆様方、本インターンシップ制度を企画運営して下さった理化学研究所事務の皆様方に衷心より感謝申し上げます。

 
大阪大学医学部医学科 3年 渡辺窓太
『理研インターンシップ』

私は医学生で友人の多くは医者を目指しています。基礎研究に進もうと思う者はごく少数で、周りにも研究者になりたいという人はいませんでした。今回のインターンシップは私と同じように研究者を目指す人たちと出会えたという点で非常に有意義でした。
もちろんインターンシップの内容も非常に充実したものでした。猪股研究室では「初期発生を光によって制御する」という、聞いただけではピンとこない、しかし実はとてもダイナミックな現象について実験を行いました。実験手法も非常にユニークで、猪股研が独自に開発した実験手法を使い、いままで一般的な細胞生物学的手法しか学んで来なかった自分にとって、たいへん興奮するものでした。もう一つ、数学から生物を考える視点を身につけることができたのも貴重な経験です。数学の基礎もおぼつかない自分にとって初めはかなり難しかったですが、インターンシップのなかで、自分でモデルをつくってそれを検証するという過程を体験することができたのは大きな経験になったと思います。
研究者としてどのように進んでいけばいいか知りたくて、インターンシップに参加しましたが、今回学んだことは自分の視野を大きく広げてくれました。将来は生物一本ではなく、数学や物理といったツ-ルを使いこなせるような研究者になりたいと思います。
今回は違う学部の人と話せたことも本当によかったです。最後の懇親会で、理学部生とどんな研究をしたいかといった立ち話もしました。他学部の学生と話すと、自分とは違う視点で物事を見ており、もっと話せたらよかったのにとも思っています。
最後に5日間お世話になった猪股研のみなさん、BDRのスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

 
感想文をご提供くださった皆様、ありがとうございました。